司法試験の勉強会

現役弁護士が法学部一年生向けに本気の解説をするブログです。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

主要事実とは?わかりやすく解説【民事執行法】

一 民事訴訟法一八六条は,裁判所が判決をするについて,当事者の申立てた事項に限定される旨定めて いる。つまり,裁判所が判決の基礎とする事実は,専ら当事者の弁論から採用されることになる。この ことを裏から言うならば,訴訟資料の提出を当事者の権能…

貸金返還請求権について解説

AがBに対し売買代金債権を有するとして,Bに代位してBの債務者Cに対し貸金返還請求 訴訟を提起したところ,右貸金債権は B の C に対する債務免除により消滅したとの理由で請求棄 却の判決を受けた。 この判決確定後,B は,右売買代金債権は A の訴訟提起時…

過失犯の共同正犯とは?わかりやすく解説

一 共同正犯の本質は,共同正犯者が相互に犯罪実行の意思を共同にし,犯罪を実現することにあるのだ が,共同正犯者がどのような場合に,共同して犯罪を実現したというかについては対立がある。構成要 件による定型性を重視する客観説の立場は,共同正犯者が…

併合罪とは?事例問題と共に解説

甲は,生活費に窮して金品を奪取しようと考え,A 宅に侵入して物色中,A に発見されて大 声を出されたため,所携のナイフで切りつけて傷害を与え,更にその際,傍らに寝ていた幼児(二 歳)の足を踏みつけて傷害を与えたが,近所の人達が駆けつけたため,その…

不当利得の返還請求権とは?わかりやすく解説

甲は,乙から昭和54年月日金一〇〇万円を,利息年三割,弁済期同年12月31日の約 定で借り受け,一年分の利息として金三〇万円を天引きされ,金七〇万円を受領したが,期限に 返済できず,昭和 55 年 12 月 31 日に金一〇〇万円を支払った。 この場合の甲・乙…

二重譲渡とは?事例問題で詳しく解説

Aは,昭和 45 年6月1日から現在に至るまで,B所有のX地を,所有の意思をもって平穏 かつ公然に占有しており,その占有の始め善意でかつ過失がなかった。一方,Bは,昭和 55 年 7月1日,X地について,何らその事実がないのに売買予約を原因として勝手にC名義…

表現の自由と取材の自由の関係とは?わかりやすく解説

一 憲法二一条は表現の自由を保障している。一九条の保障する思想,良心の自由の理念は,当然に表現 の自由の保障を要請する。憲法は,内心における思想,良心の自由を保障し,さらに,内心の思想を外 部に発表する表現についても,その自由を保障しているの…

国の財政に関する国会の権能とは?わかりやすく解説

一 財政とは,国家の活動に関する財力を調達し,管理し使用する作用であり,財源の調達において強制 的色彩を有すると共に,その管理,使用も国民の生活に重大な影響を及ぼす。従って,近代民主憲法は, 財政が国民の意思に由来することを定め,さらに,財政…

民事訴訟法一八六条について解説

一問 甲は,昭和55年3月3日乙との間で甲が乙に中古貨物自動車一台を売る旨の合意をしたが, 乙が右代金を支払わないと主張して,乙に対し右売買代金八〇万円の支払を求める訴を提起した。 乙は,甲から右自動車一台を代金八〇万円で買い受けたことは認めるが…

刑訴法事例問題

裁判所は「被告人は,×日A方において同人所有の現金五万円を窃取した」との訴因につい て審理したうえ,「被告人は,×日窃盗の目的でA方に侵入し,同所において,同人所有の現金 五万円を窃取した」との有罪判決をした。右の有罪判決にはどのような瑕疵があ…

自由心証主義の例外とは?わかりやすく解説

(一) 刑事訴訟法三一八条は,証拠の証明力は,裁判官の自由な判断に委ねるとして,自由心証主義を宣明 しているが,この原則に対する唯一の例外は,同法三一九条二項に定めるところの,自白に補強証拠を 要求していることである。法が,このように自白に補強…

訴訟条件とは?わかりやすく解説

(一) 公訴の有効要件を訴訟条件という。訴訟条件を欠いていた場合,実体裁判をすることができず,形式 裁判で訴訟を終結させなければなくなる。さらに,訴訟条件を欠いていた場合には,実体審理も進める ことができなくなる。この意味で,訴訟条件は,実体審…

訴訟告知とは?わかりやすく解説

(一) 訴訟告知とは,訴訟係属中の当事者,又はその当事者から訴訟告知を受けた者が,当該訴訟に対して 利害関係を有する第三者に対して,訴訟係属を法定の方式で通知することである。すなわち,当事者(告 知者)が,自己の訴訟に補助参加の利益を有する(当事…

将来給付の訴とは?わかりやすく解説

(一) 口頭弁論終結時には,すでに履行すべき状態に立ち至っていない給付請求権を主張する訴えである。 従って現段階において,本案判決をすることの必要性及び実効性が問題となる。すなわち,当事者間の 紛争解決の必要及び実効がない場合は,訴えの利益が否…

公務執行妨害罪における職務行為の適法性について解説

(一) 公務執行妨害罪で成立する前提として,なされた公務で違法であった場合はどのように考えたらよい であろうか。公務はそもそも職務の執行といえるものであれば足り,適法性・合法性は必要なしとする 見解(小野清一郎)もある。しかしながら,公務執行妨害…

共謀共同正犯とは?わかりやすく解説【事例問題あり】

甲・乙・丙の三人は,遊興費欲しさに,相談のうえ,A宅から金品を盗み出すことにした。 ところが,犯行当日になって,丙は,犯行に加担するのがいやになり,甲・乙に「自分は犯行を 止めた。君達も止めたらどうか。」。と話し,甲・乙も丙に「君が止めるなら…

不真正連帯債務とは?真正連帯債務との違いも併せて解説

目次 不真正連帯債務とは 不真正連帯債務のよくある例 不真正連帯債務と連帯債務の違い 不真正連帯債務の効果 不真正連帯債務とは 多数主体の債務関係として,債務者全員が,債権者に対して債務全額について責任を負う連帯債務のうちで,債務者相互の関係に…

詐害行為取消権とは?事例問題と合わせて解説

多額の債務を負担している甲は,強制執行を免れるため,ほとんど唯一の資産ともいうべき 所有土地をいとこの乙に売り渡す契約を結び,その所有権移転登記を済ませた。甲乙間の売買に 先立ち同じ土地を甲から買い受ける契約を結んでいた丙は,いかなる法的構…

内閣の国会に対して有する権能及び責任についてわかりやすく解説

(一) 内閣の権能は,憲法七三条の定めるところであるが,同条の定める一般行政事務に対し,「他の一般 行政事務」がどのようなものであるかは明らかではないが,憲法五六条により,行政権は内閣に属する のである。 その一般行政事務に含まれるもののうち,…

職業選択の自由についてわかりやすく解説

(一) 憲法二二条一項は,居住・移転の自由に加えて,職業選択の自由を宣明している。このことは,土地 への繋縛,職業の固定化などの封建的身分拘束を否定し,私経済的活動の自由を明定したものであり, その意味からも,職業選択の自由は,居住・移転の自由…

窃盗,強盗(刑法二三六条一項),恐喝(刑法二四九条一項)の各罪の保護法益について解説

一 保護法益とは,社会秩序を維持するために,国家が国家社会において保護しなければならない利益を いう。すなわち,刑法の究極の目的は社会秩序の維持にあり,そのために,刑法は,国家社会において 保護しなければならない利益に対する侵害行為を犯罪とし…

共謀共同正犯,共同正犯関係からの離脱,共犯と錯誤について解説

甲と乙は,通行人から金品を脅し取ろうと共謀の上,甲が通行人 A を脅して金品を要求し た。しかし,A がなかなか言いなりにならないので,甲は,何が何でも奪ってやろうと考え,こ ぶしで A の顔面,腹部を殴りつけ,さらに倒れてしまった A の全身を足で蹴…

代理人と使者の違いと法律上の問題点について解説

代理人 使者 基本的な差異 法律上の問題点 まとめ 代理人 本人のためにすることを示して(顕名),相手方との間で自ら意思表示をして,その法律効果をことごとく直接本人に帰属させる者である。 使者 本人が既に決定済みの意思表示を相手に伝える者であり,そ…

甲と乙は,丙から共同で A 土地を買い受け,各二分の一の持分で共有していたところ,甲 は,A 土地につき,乙に無断で自己への単独名義の所有権移転登記をした上,その直後に,これ を丁に対し一〇〇〇万円で売却し,丁への所有権移転登記をしてしまった。 丁は,A 土地の所有権を取得するか。また,その場合の甲・丁間の法律関係について説明せよ。

甲と乙は,丙から共同で A 土地を買い受け,各二分の一の持分で共有していたところ,甲 は,A 土地につき,乙に無断で自己への単独名義の所有権移転登記をした上,その直後に,これ を丁に対し一〇〇〇万円で売却し,丁への所有権移転登記をしてしまった。 …

明白かつ現在(現実)の危険の原則と表現の自由(憲法21条)の保証内容を徹底解説

明白かつ現在(現実)の危険の原則とは,政府が人を表現行為の故に処罰することができるのは,政府が憲法上防止することのできる実体的害悪がもたらされる明白にしてさし迫った危険の存する場合に限られるという原則をいう。この原則は,学説上,表現の自由の…

憲法三条の内閣の責任とは?解説

一 本問は,内閣の責任について論述を求められているが,「憲法三条の」という限定がついているので, 憲法三条の解釈が問われていると考えてよい。したがって,同条を解釈する上で問題となる点を順に論 じていけば足りると思われる。 二 まず,本条の定める…

共同正犯の中止未遂の要件についてわかりやすく解説

要件 効果 要件 中止未遂が成立するには,(イ)「 自己の意思により」(ロ)「止めた」ことが必要であり,(ロ)については,(1) 実行行為そのものを中止する場合と(2)実行行為終了後結果の発生を防止する場合が考えられる。共同正犯の中止未遂の要件も,右と…

憲法第七六条第二項について解説

一 はじめに 憲法七六条は,司法の章の冒頭に位置し,同条一項は,「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定 めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定する。これは,四一条,六五条とともに,三権分立を定めた規定である。七六条一項にいう下…