司法試験の勉強会

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不真正連帯債務とは?真正連帯債務との違いも併せて解説

目次


不真正連帯債務とは

多数主体の債務関係として,債務者全員が,債権者に対して債務全額について責任を負う連帯債務のうちで,債務者相互の関係において,民法の厳格な適用を受けないものがあり,これを不真正連帯債務という。

 

不真正連帯債務のよくある例

主として,同一の損害について,数人が各別の立場において填補すべき義務を負担する場合である。
不法行為者の賠償義務と保険会社の被害者との保険契約にもとづく填補義務,受寄物を不注意で盗まれた場合の受寄者の債務不履行にもとづく賠償義務と窃取者の不法行為による賠償義務,法人の不法行為による賠償責任と代表機関個人の賠償義務,使用者責任の場合の被用者の加害行為についての被用者自身と使用者又は監督者の各賠償義務及び使用者と監督者の各賠償義務,責任無能力の加害行為についての法定監督義務者と代監督義務者の各賠償義務,動物の加害行為についての占有者と保管者の各賠償義務などが主要な例である。
共同不法行為についての,共同不法行為者間の責任については,民法七一九条はこれを連帯債務としているが,不真正連帯債務の趣旨と解するのが通説である。

不真正連帯債務と連帯債務の違い

不真正連帯債務は,債務者全員が債務全額について責任を負うことでは連帯債務と同一であるが,債務者一人に生じた事由は他に影響せず相対的効力を有するにとどまるため,民法四三四条ないし四四〇条の適用を受けないこと,及び債務者相互の求償関係を生じないことの二つの点で連帯債務と異なって いる。 
このような差異を求める理由としては,債務の成立原因について,連帯債務は実質的同一の原因で発生するが,不真正連帯債務は各債務が各異の原因で生じるためであるとする説と,連帯債務と不真正連帯債務は客観的に単一の目的つまり各自全額について責任を負い債権者を満足させるという目的について,それを達する手段としては類似するが,各債務者相互間について,連帯債務では主観的に関連し合っているが,不真正連帯債務ではその関連関係が存在しないからであるとする説とがある。

 

不真正連帯債務の効果

①不真正連帯債務の第一の特色は,民法四三四条ないし四四〇条の適用がないことである。
すなわち, 債権者を満足される事由(弁済,代物弁済,供託,相殺)については絶対的効力を生ずる。つまり,債務者の一人が債務を弁済すれば,他の債務者が債権者に対する関係で免責されることは,当然のこととい わなければならず,その限りで連帯債務とは異ならない。
しかし,不真正連帯債務では債務者相互に主観的関連関係がないのだから,各債務者は自己に関する法律関係でのみ各別の責任を負えばよいわけである。そして,債権者を満足させる事由に,絶対的効力が生じるのは,各自の債務が単一の目的を志向していることでは連帯債務と異ならないからである。
従って,一人の債務者に対する債権が消滅時効にかかっても,他の債務者には影響しない。もっとも,免除の効力について,とりわけ共同不法行為の分野において絶対的効力を認めようとする考え方がある 。
この考え方は,不真正連帯債務がとくに損害賠償債務相互に生じる関係から,債権者と一 人の債務者が和解した場合について論じ,不真正連帯債務といっても負担部分を想定しうる場合には, 免除に絶対的効力を認める余地が充分にあるとするものである。

②不真正連帯債務の第二の特色は,債務者相互に主観的関連がない結果として負担部分がなく,従って求償関係を生じないということである。
もっとも,連帯債務のように,共同免責のための主観的関連によるのでなく,債務者相互の特別の法律関係から求償関係の生じることが多い。
法人と機関個人,使用者又は監督者と被用者の間では民法七一五条三項により前者が後者に求償しうるものとされている。
また,法定監護義務者と代監督者,使用者と監督者,動物の占有者と保管者など は,相互の契約関係により,前者が後者に求償しうることがあろうし,保険会社と不法行為者,受寄者と受寄物を盗んだ者との間では,後者が終局の責任を負うものと考えられ,前者が賠償したときは,被害者の権利に代位して,民法四二二条により後者に請求できる。
特に,保険会社と不法行為者との関係は,保険代位として明文上商法六六二条に定められており,被保険者(被害者),保険契約者(保険料を支払う契約当事者で,被保険者と一致する場合が多い)の不法行為者に対する損害賠償債権が,保険会社に優先している。
なお,不真正連帯債務について,債務者間の主観的関連関係からの負担部分はないが,債務発生に至った実質関係から負担すべき部分があるとし,求償関係を認める見解があり,最近の判例も,共同不法行為者相互に,公平の見地から求償関係を認めている。
そして,この共同不法行為における判例理論をすすめ,使用者責任の場合の賠償義務に,使用者と被用者の負担部分を考えて,前述の,民法七一五条三項による,使用者の被用者に対する求償を制約しようとする所説もある。