【ゼロから始める法学ガチ解説シリーズ】法の下の平等の原則とは?具体例をあげて解説
平等原則の意義・憲法14条1項の保証内容
平等原則とは,憲法14条1項によって保障されるものである。
この条文によって保障される内容には,以下のものがある。
平等が求められる法律の在り方
① 法適用の平等
その法律を全ての人に適用する,ということである(美女やイケメンに刑法を適用しない,ということはない)。
これは,「法の下に」との文言から明らかである。
② 法内容の平等
法の内容についても,平等が要求される。つまり,平等の原則にしたがって,法律が定められるべきであるとされる。
明文上は明らかでないが,「個人の尊厳」(憲法13条)を実現するという憲法の基本理念から導かれるものである。
平等の意味内容
考え方としては,❶絶対的平等(皆のものを同一に扱う),❷相対的平等(等しいものは等しく,等しくないものは等しくなく扱う)の2つがありうる。
この点は,❷相対的平等を意味すると考えることが一般である。
⇒その結果,「合理的な差別」であれば憲法14条1項に反しないこととなる。
憲法14条1項の列挙事由の意味について
ア 人種
皮膚,毛髪,目,体型等の身体的特徴によりされる人類学上の区別。
イ 信条
個人の基本的なものの見方,考え方をいい,宗教上の信仰のみならず,広く思想上,政治上の主義を含む。
信条を理由とした不平等は,思想・良心の自由の問題となることも多く,平等原則はメインでないことも多い。
ウ 性別
男女の性別のこと。
エ 社会的身分
人がある程度長期にわたり持続する地位のこと。そのため,「自分の意思では変えることのできない固定した地位」等と狭く解しないのが一般。
オ 門地
家柄のこと。
※なお,憲法14条1項は例示列挙であり,これ以外を理由とする差別であっても,本条によって(合理的な理由なく)許されないことは一般に認められた考えである
⇒すなわち,能力を理由とした差別であっても,「合理的な差別」でなければ違憲になる
違憲性審査の厳格さに関して
憲法14条1項の列挙事由にあたるか否か
列挙事由が例示列挙であるとしても,歴史上,不当な差別をされた理由となってきたものを掲げているから,厳しく審査するという立場がある(いわゆる「特別意味説」)。
当人の努力ではどうしようもない場合
たとえば,「肌が黒い」という理由で,白米を食べることを禁止した場合には,肌を白くするには,全身整形をするほかなく,事実上,当人には対応することができない問題であるが,そのような理由による扱いの際は,当人によって脱することができず,事実上永続的な効果をもたらすものであるから,より慎重に検討すべきといえるのである。
取扱いの差異が,いかなる権利利益に対してされているか
精神的な自由は,経済的自由よりも重要度が高い。そのため,精神的自由に関する不平等(例:反政府思想を持っている人は,持っていない人に比べて税金を倍にする)は,経済的自由に関する不平等(例:年収1000万円の人は,年収300万円の人に比べて税金を倍にする)よりも,厳格に審査される。
平等原則が問題となる具体例
判例 |
問題点 |
比較対象 |
結論 |
備考 |
最判昭和48.4.4 |
改正前刑法200条(尊属殺人)の違憲性
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改正前200条と,刑法199条 |
法定刑において,改正前200条は,死刑又は無期懲役のみと定めていため,立法目的のための必要な限度を遥かに超えるから,違憲とした |
立法目的自体は,尊属に対する尊重というものであって,社会生活上の基本的道義というべきであり,刑法上の保護に値するとした |
最大判平成25.9.4 |
改正前民法900条4号ただし書(非嫡出子の法定相続分を,嫡出子のそれの2分の1とした規定)の合憲性 |
非嫡出子の法定相続分と,嫡出子の法定相続分 |
①我が国の婚姻や家族の実態の変化,その在り方に対する国民の意識の変化,②このような差異を設けている欧米諸国はない等という諸外国の状況の大きな変化等を踏まえると,父母が婚姻関係になかったという子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすべきではないから,違憲 |
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最大判平成20・6・4 |
国籍法3条1項(日本国民である父とそうでない母との間に生まれた非嫡出子のうち,父が認知し,父母が婚姻した場合のみ届出により国籍取得を認めている規定)の違憲性 |
日本国民である父とそうでない母との間に生まれた非嫡出子のうち,父が認知し,父母が婚姻した子(準正子)と,日本国民である父とそうでない母との間に生まれた非嫡出子のうち,父が認知し,父母が婚姻しなかった子 |
①国籍が,わが国において基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等を受ける意味で意味を持つ重要な法的地位であること,②嫡出子たる身分を取得するかどうかは,子にとって自らの意思や努力では変えられない父母の身分行為に係る事柄であるから,その区別の合理性を慎重に検討すべきであり,このような子の不利益は看過しがたく,立法目的との間に合理的関連性を見出しがたい |
国籍法3条1項全体を違憲としたのではなく,“父母が婚姻した場合”という要件のみを違憲無効とし,その余の定めは合憲として維持した。 ※本判例は,法令違憲の効力の問題としても勉強になる |
最判昭和33.10.15 |
都売春等取締条例により,売春を禁止する条例の違憲性 |
売春を罰する条例のある県とそうでない県(で売春をおこなった場合の処遇の差異) |
憲法94条が条例制定権を認めるのは,地方の実情に応じた取扱いをすることが合理的であるからであり,その結果,地域のよって差別が生じることは当然に予期されることであって,憲法が容認 しているものといえ,合憲 |
条例制定権についても,頻出の争点なので,復習しておいいてほしい |