司法試験の勉強会

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内閣の国会に対して有する権能及び責任についてわかりやすく解説

(一) 内閣の権能は,憲法七三条の定めるところであるが,同条の定める一般行政事務に対し,「他の一般 行政事務」がどのようなものであるかは明らかではないが,憲法五六条により,行政権は内閣に属する のである。
その一般行政事務に含まれるもののうち,国会に対するものは,憲法七三条五号の予算を国会に提出 すること,同九〇条の決算を国会に提出すること,同九一条の国会に財政状況を報告することがある。


(二) 憲法四一条は国会を唯一の立法機関として,国会単独立法の原則を明らかにしているため,内閣に法 案提出権があるかどうかが,かつて争われた。
法律の発案も立法の一部と考えるのであれば,内閣に法 案提出権を認めるのは,国会単独立法の原則の例外となるが,法案提出権が議員にもあることは争いが ないし,法律の成立は国会の議決によるのだから,内閣に法案提出権を認めるのが通説である。なお, 否定説も存する。


(三) 次に,憲法六九条の解散権を内閣が有するかということが問題となる。憲法は七条において,衆議院 の解散を天皇の国事行為と定めているほか,特に解散権の所在について明定していない。
しかし,憲法 四条一項により,天皇は国政に関する権能を有しないわけであるから,天皇は,他の機関の決定にもと づき,解散を外部に宣示するのみの,形式的解散権を有するにすぎないのである。
ところで,憲法七条 は,天皇の国事行為について,内閣の助言と承認にもとづくことを定めているが,それのみによって,内閣が解散を決定する権能を有していると考えることは早計である。
むしろ,憲法六九条は内閣が解散 か総辞職かを択一的に決定しなければならない趣旨なのであるし,同条,五四条が,衆議院の解散を受 身の形で定めていること,さらには,現行憲法は,明文上当然に議院内閣制を採用しているといわれる が,立法と行政の依存・抑制関係を前提としている議院内閣制のもとでは,内閣に解散権が存すると解 することが,合理的というべきであろう。
もっとも,衆議院の自主性を根拠に,衆議院の自律解散権を 認めようとする見解(長谷川正安)も存するが,明文の根拠に欠け,実益のない議論というべきであろう。


(四) なお,内閣が解散権を行使しうる場合について,憲法七条の内閣の助言と承認が,国事行為の形式的・ 儀礼的色彩の影響をうけるため,憲法六九条の場合のみなされるべきであるとする見解(小島和司)と,内 閣の助言と承認に実質的決定権をふくましめて,憲法六九条の場合に限定しない考え方(宮沢俊義,佐藤 功)とがある。
しかし,解散権の根拠を憲法六九条に求めても,六九条が同条の定める場合にのみ解散を 限定したものとは解せられず,むしろ,前述の如く,現行憲法が議院内閣制を採用していることを考慮 するならば,解散権の行使も憲法六九条に限定されるべきではあるまい。
もっとも,議院内閣制を採用 しているからといって,その制度の本質的機能を行政と立法との依存・抑制関係に求めて,解散権の行 使を無限定に考えることに疑問を呈する見解(芦部信喜)もある。
なるほど,議院内閣制が行政と立法と の緊張関係に根ざしていることに疑問があることは,そのとおりであるにしても,解散権の存在理由が, 行政から立法への抑制というよりも,むしろ,民意による代表議会の代謝を前提とした,民主的作用に あるというべきなのだから,議院内閣制における,行政と立法の関係もその意味で理解されるべきであ り,そうだとすれば,内閣の解散権を憲法六九条に限定することもないと考えられる。


(五) 憲法六六条三項は,「内閣は,行政権の行使について,国会に対し,連帯して責住を負ふ」と定めて いる。
すなわち,責任の範囲は,内閣の権能である行政権の行使全般に及ぶのであるし,責任の相手方 は国会であり,民主政治の原則からみて当然のことである。また,責任の態様は旧憲法と異なり,連帯 責任制であって,これは内閣の一体性の反面であり,それ故,閣議で全員一致が要求されているのであ る。
従って,内閣は憲法三条の天皇の国事行為についての助言・承認についても,自己の行為として責 任を負う。
この内閣の責任は,法的責任というより,政治的責任である。というのは,内閣の職責が法的責任に よる拘束になじまないことや,行政を国会の政治的抑制の下においた議院内閣制の趣旨によるものとい えよう。
もっとも,衆議院での不信任決議により,解散か総辞職かという選択を迫られる場合は,法的 責任の色彩が濃厚となる。 責任の形式上の表現として,法律及び政令に,国務大臣が署名し,総理大臣が連署する。大臣責任を 公証するためのものである。