将来給付の訴とは?わかりやすく解説
(一) 口頭弁論終結時には,すでに履行すべき状態に立ち至っていない給付請求権を主張する訴えである。 従って現段階において,本案判決をすることの必要性及び実効性が問題となる。すなわち,当事者間の 紛争解決の必要及び実効がない場合は,訴えの利益が否定されるからである。
訴えの利益は,訴訟要件すなわち本案審理の要件と考えられている。そのため,手続内で,訴えの利益の存否が調査され,存在が否定されると,訴え却下の判決で審理が打ち切られることになる。
しかし, 訴訟要件も,訴訟手続開始の要件ではないので,外形上訴えと目される行為があれば,訴訟手続を開始 しなければならない。その手続内で調査するのである。
訴訟要件のうち,訴えの利益と,当事者適格は, 請求内容に立ち入り,個別的に本案判決することにより,有効・適切な紛争解決をなしうるかを判断す る要因であり,形式的判断に止まるその余の訴訟要件と区別して論じられる。
そして,この判断は,民 事訴訟制度を利用するに足りる,実質権利・利益や主体にかかわるもので,制度そのものに内在する問 題であり,訴権論として論じられているが,本問とは,いささかかけ離れるため,検討を促すに留める。
(二) 訴えの利益は,主として確認訴訟の場合に論じられるが,給付訴訟の場合は将来の給付の訴で特に問 題となる。
将来の給付の訴とは,期限未到来であったり,停止条件付であったりする請求権や,基礎の すでに成立している保証人に対する求償権にもとづく訴訟が考えられる。
民事訴訟法二二六条は,予め その請求をなす必要ある場合に許されると定めている。この解釈が問題となる。
まず,履行が少しでも遅れたならば,債務の本旨に適合した履行とは考えられない場合には,訴えの 利益が認められるといってよいだろう。
例えば,民法五四二条による,定期売買にもとづく給付,或い は,扶養料の請求などであり,債務者が履行を確約していたとしても,やはり同様の結論となろう。
次に,債務者が債務の存在,それに付せられた条件,履行期などを争うような場合にも訴えの利益が 認められよう(三ケ月は,債務者が争うことまでは不要であり,不履行の意思が推知されるのみで足りる とする。)。
継続・反復的給付を内容とする債務については,現在までの不履行は将来の不履行を推知さ せる。実務上,元本支払請求に付帯する完済に至るまでの遅延損害金,家屋明渡請求に付帯する明渡ま での賃料相当損害金などの請求は,その例であるといわなければならない。
さらに,本来の給付請求に つき,執行不能を危惧してなされる代償請求もまた同様である。
代償請求は,このように口頭弁論終結時における給付請求について,口頭弁論終結時期以降の執行不 能に備えてなされるものであるから,本来の給付請求と両立しうるものであり,両請求が併合して提起 されたならば,単純併合の形態となる。従って,その場合に,判決はいずれの請求に対しても応答しなければならない。