司法試験の勉強会

現役弁護士が法学部一年生向けに本気の解説をするブログです。

刑法解説

中止未遂の成立に必要な4つの要件とは?現役弁護士が徹底解説

中止未遂とは、犯罪を実行したものの、自分でやめた場合に成立する特別な犯罪態様です。中止未遂が認められると、刑が必ず減軽または免除されるという法律上の利益があります。しかし、中止未遂になるためには、自己の意思により犯罪を中止したことが必要で…

未必の故意とは?殺人罪を例にわかりやすく解説

責任主義 故意 意思説 表象説 故意責任の検討 認識ある過失の検討 刑法は三八条一項本文において「罪を犯す意(=故意)なき行為はこれを罰せず」とし,故意を犯罪成立の基本的要件としている。これは,ある者が違法行為を行ったとしても,その行為について行為…

責任能力とは?わかりやすく解説

一 問題の所在 刑法三九条一項は,心神喪失者の行為は罰しないと定めている。即ち,刑法の非難の対象になるのは責任能力ある行為のみである。これを行為と責任能力の同時存在の原則といい,責任主義から当然に導かれる理論である。しかし例えば,酒を飲めば…

被害者の承諾とは?わかりやすく解説

①ローマ法は,同意が存するのであれば不法行為の成立を阻却すると定めていた。この原則は,ローマ刑法が公法として性格を帯有していなかったことから,現行刑法に妥当する考え方ではない。すなわち, 刑法の関心は個人的法益の保護と共に,社会的公共的法益…

窃盗罪の保護法益とは?現役弁護士が徹底解説

犯罪は法益,即ち法的に保護された利益の侵害である。従ってある罪の保護法益は何か,という問題は,当該の法規,各個の構成要件が法的に保護しようとしている利益は何か,と言いかえることができよう。窃盗罪の保護法益については,いわゆる本権説と占有説(…

不能犯とは?わかりやすく解説

一 不能犯の意義 行為者が犯罪的結果を意欲してある行為を行ったが,その結果を発生させるに至らなかったという場合には,ピストルで仇敵を射殺しようとしたが弾丸が命中しなかったというように首尾よく行えば結果を発生させえたのに失敗した場合と,砂糖に…

間接正犯とは?わかりやすく解説

一 間接正犯の意義 自ら犯罪を実行した者が,正犯であることは疑いないが,直接手を下さないとしても,他人を道具のように操って自己の犯罪意思を実現した者は,自ら手を下した者と同視してよい。 このように,他人を道具として利用することによって犯罪を実…

暴行の意義とは?わかりやすく解説

「暴行」という概念は,刑法上多くの条文で用いられているが,その内容は,「有形力の不正行使」と いう共通点はあるものの,各犯罪の性質の相違に基づいてかなりニュアンスの相違がある。 最も広い意味で用いられる場合は,有形力行使の総ての場合を含むと…

窃盗罪における実行の着手とは?わかりやすく解説

(一) 犯罪の実行着手の概念は,犯罪遂行が結果を惹起することなく終了した場合,未遂罪として処罰しうるかの判断基準として機能することになる。 犯罪者に対する処罰は,国家の刑罰権の発動である。国家が恣意的に国民に対して刑罰権を行使しうるとすれば,…

因果関係とは?事例問題とともに解説

甲は,深夜,散歩をしていた際,女性の叫び声が聞こえたので,声のした方に近づいたところ,女性のBがぐったりした様子でシャッターを背にして立っており,その前に若い男AがBの両肩に手をかけて立っていた。そのため,甲は,AがBを強姦しようとしてい…

期待可能性とは?わかりやすく解説

一期待可能性とは,行為当時の具体的状況下で,行為者にその違法行為に出ないで,他の適法行為を行なうことを期待しうる可能性をいう。 この理論は,いわゆる規範的責任論の展開とともに生まれた,と言われている。 二刑法上の責任の内容たる要素の性質をど…