司法試験の勉強会

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違法性の錯誤についてわかりやすく解説

故意が成立するためには,まず犯罪事実の認識が必要であるが,このほかに違法性の意識を必要とす るか,という点については判例,学説の大きく対立するところである。この点について,代表的な考え 方としては次の五説があげられよう。

 

a 違法性の意識不要説
判例がこの立場と理解される。
b 違法性の意識の可能性必要説
後に述べるように,制限故意説とも呼ばれる。違法性の意識を欠 いたことに過失があれば,故意犯が成立するとする。
c 自然犯法定犯二分説
自然犯,刑事犯については違法性の意識不要。法定犯,行政犯については 必要とする立場。
d 違法性の意識必要説
後に述べるように,厳格故意説とも呼ばれる。学説上,通説的立場とみら れる。
e 責任説
右四説と体系的前提を異にする立場。故意の内容としては犯罪事実の認識にとどまり,違 法性の意識又はその可能性は,故意とは別の独立した責任要素ととらえる。この立場は,右四説 のように,違法性の意識又はその可能性を故意の要素か否かの問題とする考え方を故意説と名付 け,とりわけ右 b 説を制限故意説,d 説を厳格故意説と呼ぶ。

 これらの各説については,いずれも次のような批判が加えられている。
まず a 説に対しては,すべて 国民は犯罪事実が法によって許されないことを知っているはずである,という擬制を根底においており, 不可抗力により違法性の意識を欠いた場合まで故意責任を追及することは責任主義に反する,という批 判が加えられている。また,
b 説は,違法性の意識を欠いたことに過失がある場合何故に故意犯が成立 するのか,その理由があいまいである,と批判される。
c 説に関しては,自然犯について a 説と同じ批 判があてはまるだろう。
次に d 説は,常習犯人のような規範意識の鈍磨した者や確信犯人のような場合, 違法性の意識が乏しく,従って責任追及が困難となる上,特に法定犯については取締目的を達成しにく いという難点がある。
最後に,e 説に対しては,故意とはまさに法規範に違反する行為者の人格態度を 問題とすべきであるのに,単なる犯罪事実の認識をもって足りるとするところに,そもそも体系的な疑 問がある,との批判が加えられる。

 そこで次に,錯誤により違法性の意識を欠いた場合をどのように考えるべきであろうか。
 右の a 説によれば当然故意は阻却しないことになるし,d 説によれば故意は阻却される。
c 説によれ ば,自然犯については阻却せず,法定犯については阻却することになる。
また,b 説によれば,単なる 違法性の錯誤は故意を阻却しないが,違法性の意識の可能性そのものが存在しなかった場合には故意が 阻却されることになる。
一方,e 説によれば,単なる錯誤は責任を阻却しないが,錯誤が不可避的で違 法性の意識の可能性もなかったときには責任が阻却されることになる。