司法試験の勉強会

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共犯と身分―常習賭博の幇助について解説

 共犯の本質について,まず,共犯とは何を共同にするものか,という点に関し,犯罪共同説,即ち数 人が共同して特定の構成要件に該当する犯罪を行うことをいうとする説と,行為共同説,即ち数人が共 同の行為によって各自の企図する犯罪を遂行することをいうとする説がある。
 次に共犯(ここでは特に狭義の共犯,即ち教唆犯,幇助犯)が成立するための要件に関し,共犯従属性 説,即ち共犯が成立するためには正犯者が一定の行為(例えば制限従属性説に従えば,構成要件に該当し, かつ違法な行為)を行うことを要するとする説と,共犯独立性説,即ち共犯者の固有の行為により成立し, 正犯者の行為は要らないとする説がある。  
従来の判例,通説は,犯罪共同説をとり,かつ共犯従属性説をとっていることは,周知の通りである。

 

 次に,六五条一項二項に関しては,通説は一項は真正身分犯について共犯の成立を,二項は不真正身 分犯について科刑の方法を定めた規定だとし,判例もこれに従うと理解されているのに対し,有力説は, 一項は真正,不真正双方について共犯の成立を,二項は不真正身分犯について科刑の方法を定めた規定 だとする。不真正身分犯も行為者が身分を有することによってはじめてその罪が構成されることにかわ りがないことを理由とする。もっとも,この点は,具体的には,不真正身分犯について六五条一項を適 用するか(後説)否か(前説)の違いのみである。

 

 最後に,常習犯にも六五条の適用があるか,が問題となる。この点に関し有力説は,常習性は行為者 の属性であり行為の属性ではなく,従って常習犯は,行為者類型を定めたもので,身分犯の一種では あっても,行為類型たる通常の身分犯とは性質を異にするから,六五条の適用はない,とする。しかし, 常習性を単に行為者の属性と見ることには疑問がある。行為者の属性であるとともに行為の属性でもあ ると見るべきであり,このように見るときは,常習犯は,行為者類型のほかに行為類型をも定めたもの と解することができ,結局,通常の身分犯と同様に考えることができるであろう。判例もこの立場に立 つものと考えられる。