司法試験の勉強会

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停止条件と解除条件とは,具体例を挙げてわかりやすく解説

 

一 条件の意義


条件とは,ある法律行為をする際に,その当事者の意思によって,その法律行為に附加された約款に基づいて,その法律行為の効力を制限するものであり,附款と呼ばれる。
条件と同様の機能を営む附款として,期限があるが,条件となる事実は,発生するかどうか不明のものでなければならないという点において,到来することが確実である期限と区別される。

条件であるか期限であるかが問題となるものとして,いわゆる「出世払い」の約束がある。

判例は「出世払い」については,一般に不確定期限と解し,客観的に見て支払い得るだけの成功を収めるか成功不能か確定した時に弁済期日が到来すると解している。
条件となる事実は,将来において確定すべき事実でなければならず,既に確定している事実は,たとえ当事者がそれを知らない場合でも条件にはならない。

調査の時間的余裕のない場合などに,右のような事実が「条件」とされた場合について,条件についての規定が準用される(民法一三一条三項)が,通説は,このような既成条件は,条件ではないとして,条件を将来の事実に限定している(客観説)。
条件は,当事者が任意に定めるものであり,この点で法が法律行為の効力発生に要求している要件(法 定条件と呼ばれる。),例えば,遺贈を受ける者は遺贈者の死亡時に生存していなければならない(民法九九四条)といったものとは区別される。

 

停止条件解除条件


条件には,停止条件(民法一二七条一項)と解除条件(同条二項)があるが,その区別は当事者の条件意思による。

条件成就により法律行為の効力を生ぜしめる意思のときが停止条件であり,法律行為の効力を失わせる意思のときが解除条件である。

停止条件付法律行為は,行為時にすでに成立しており,条件が成就しさえすれば,その他別段の意思表示を要しないという点において,契約の予約とは異なる。契約の予約の場合には,本契約は予約の時点では成立しておらず,単に後日本契約を成立せしめる債権債務関係を生ぜしめるだけであり,本契約 の成立には予約完結の意思表示が必要とされるからである。
解除条件付法律行為は,条件成就まで法律行為の効力を維持するが,条件の成就によって当然に法律行為の効力を失い,あらためて法律行為を失効せしめる意思表示を必要としないという点において,解除権が留保されている法律行為と異なる。

解除権留保の場合には,留保者が解除の意思表示をすることによってはじめて解除の効力が生じ,法律行為の効力が失われるからである。

 

三 具体例における停止条件解除条件の区別


停止条件の具体例としてよく挙げられるのは,試験に合格したら時計を与えるという,試験合格を停止条件とした贈与契約の例であり,解除条件の具体例としてよく挙げられるのは,試験に落第すれば以後仕送りをやめるという試験落第を解除条件とした贈与契約の例である。
右の例の場合は,停止条件付法律行為か解除条件付法律行為かが比較的行為の外形から明らかであるが,そうでない場合もある。

それは,この区別が当事者の意思に基づくものであることによる。

従って, そのような場合,いずれであるかは,行為の外形のみで判断するのではなく,当事者の条件意思の解釈により決することになる。
一般的には,解除条件付法律行為は,条件成否未定の間において,すでにその効力が発生しているのであるから,行為者が特に行為と同時に効力の発生を意欲しているものと認めがたい場合には,停止条件を付したものと考えるべきであろう。
そこで,具体例につき検討する。

借主が自己の家屋を新築した場合には,賃借家屋を明け渡すという約束は,借主の家屋新築を停止条件とした賃貸借契約の合意解除ともみれるし,借主の家屋新築を解除条件とした賃貸借契約ともみることができる。
右の約束が,賃貸借契約締結の際になされたものである場合には,当事者の意思としては,賃貸借契約に解除条件を付したものと考えるのが合理的であろう。

これに対して,右約束が,既に成立している賃貸借契約に基づいて居住している借主と貸主との間で, あらたに結ばれたような場合には,停止条件付合意解除とみるのが合理的であるということになる。