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刑事訴訟法解説

甲と乙が共犯として起訴され併合審理されている場合,甲の供述を乙の証拠に用いるには,どのような方法があるか。考えられる方法を述べた上,それぞれの利害得失について説明せよ。

 

 

1 甲の公判廷における供述

(1) 併合審理のまま,共同被告人としての甲に対し,刑事訴訟法三一一条二項,三項により供述を求める方法
この場合,被告人の地位にある甲は,黙秘権を有し,宣誓による制裁を受けない。
従って,供述の真実性の担保に欠けるうえ,乙の同法三一一条三項による質問に際し,甲が黙秘権を行使した場合には, 乙の反対尋問権は充分保障されない結果となる。
右のような甲の供述に証拠能力を認めるか否かについては,学説上(イ)肯定説(ロ)否定説(ハ)条件付肯定説(事実上反対尋問が充分に行われた場合にのみ肯定する説,信用性の情況的保障と必要性のある場合には肯定する説)があるが,判例は,これを肯定し,反対尋問に際して黙秘権が行使された場合には,その供述の信憑力の問題が生ずるに過ぎないとしている(最判昭二八・七・一〇裁判集八四・四六七)。

(2) 審理を分離したうえ,甲を証人として尋問する方法(共同被告人の地位と証人の地位とは相いれず,共同被告人は同一訴訟手続においては証人となることはできないから,甲を証人として尋問する ためには手続の分離を要する。大決大一五・九・一三刑集五・四〇七)
この場合,証人の地位にある甲は,供述義務を負い,偽証罪の制裁を受けることになる。
従って,甲の供述の真実性の担保及び乙の反対尋問権の保障は,より確保されることになる。
一方,甲は,自己が有罪判決を受ける虞があることを理由として証言を拒むことができるが,右証言拒絶権の行使にあたっては,有罪判決を受ける虞があることの表明が必要とされるため,この点を重視すると,甲を証人として尋問することは,被告人としての甲が有する黙秘権を侵害することになるのではないかとの疑問が生ずる。
判例は,証言拒絶権があるから黙秘権を侵害することにはならないとしているが,証言拒絶の事 由は抽象的に示せば足りるものとされており(最判昭三四・八・一〇刑集一三・九・一六一七),証言拒絶事由の表示が甲の事件につき証拠として使用されることはないのであるから,証言拒絶権と黙秘権とはその本質を同じくするものであるとの理解が可能である。

(二) 甲の供述調書

(1) 同法三二六条による同意のある場合
(2) 右同意のない場合
この場合,甲は乙との関係では第三者であるから,同法三二一条の要件を満たす場合に限り,甲の供述調書を証拠とすることができる(最決昭二七・一二・一一刑集六・一一・一二九七,最判昭二八・七・ 七刑集七・七・一四四一)。
なお,同法三二一条の証拠能力取得の要件である自己矛盾の供述とは,同一手続内において,共同被告人としての甲の自己矛盾供述があれば足り,手続を分離して甲を証人として尋問する必要はない。
又, 併合審理の過程で甲が黙秘権を行使した場合には,同法三二一条一項の供述者が供述できないときにあたるものとして取り扱われる(最判昭二七・四・九刑集六・四・五八四)。