司法試験の勉強会

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内閣の責任について解説

一 

憲法上,内閣の責任については,行政権の行使についての責任(六六条三項)と天皇の国事行為への 助言と承認についての責任(三条)とが規定されている。
以下,その責任の範囲,相手方,性質につい て検討する。

二 

内閣は「行政権の行使について」責任を負う(六六条三項)。
ここにいう「行政権」の意義について は争いがあるが,本条が内閣の権限の行使に関する責任を一般的に明らかにした規定であることに照ら すと,その権限行使の範囲を特に限定すべきではなく,「形式的意味における行政権」と解すべきであ る(「実質的意味における行政権」と解すると内閣の法律案提出等は「行政権」に含まれないことにな る)。
したがって,内閣の権能に属する全ての事項に対して責任が及ぶ。
なお,「実質的意味における行 政権」を意味すると解する説も,国民代表機関としての地位にかんがみ,国会は,実質的意味における 行政権以外の内閣の権限行使についても責任を追及できると考えているようである。
次に,天皇の国事行為への助言と承認についての責任については,内閣の本来的責任なのか,天皇に 代わって負う代位責任なのかという問題があるが,内閣は自己のなす助言と承認について責任を負うの であるから,本来的責任と考えられている。
この責件の相手方,性質については,「行政権」の意義を「形式的意味における行政権」と解する説に立つと,天皇の国事行為への助言と承認も当然「行政権」(六 六条三項)に含まれることになり,同条の責任と同様に考えることができる。
なお,右助言と承認が「行 政権」に含まれないという説に立っても,内閣の責任の相手方,性質について,六六条三項と別異に扱 う根拠もないので,同条の責任と同様に考えることになろう。