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【刑事訴訟法】訴因の訂正とは?わかりやすく解説

 訴因の訂正とは,訴因の内容に実質的影響を与えない範囲内で比較的軽微な誤りを正すことをいう。 例えば,起訴状に恐喝罪に該当する事実が記載され,罪名・罰条も同罪として記載されていながら,事 実の末尾が「騙取し」とあるのを,「喝取し」と正すことである。なお,訴因の訂正とは,起訴状が無 効となるほどではないが,なお不特定である場合の問題としてとらえる見解(平野)があるが,判例をい くつかみてみると,訴因の訂正という概念は,不特定を正すという場合よりは,誤りを正すという場合 に使われているので,最初に述べたように解するのが妥当であろう。

訴因の訂正も,検察官の手により訴因の内容に変更を加えるという点では,訴因の変更,補正と共通 である。また起訴状が有効であることを前提とする点,及び実体審理に入る前に限られないという点に おいて訴因の変更と共通で,訴因の補正とは異なる。さらに,訴因の変更が,訴因の内容に多かれ少な かれ実質的な影響を与える程度に手を加えることを意味するのに対し,訴因の訂正は,そのような影響 を与えない範囲内で手を加える,という点で訴因の変更とも異なる。

もっとも,この訴因の訂正と変更との区別は,実際には困難である。下級審の判例であるが,1窃盗 の起訴状にその日時が昭和 33 年3月上旬と記載されているのを,昭和 34 年3月上旬に訂正するのは許 されるとする判例(東高判昭三五・二・六下刑集二・二・一〇九)と,2道路交通法違反の罪の起訴状に その日時が昭和 39 年3月 20 日と記載されているのを,昭和 38 年3月 20 日に訂正するのは許されない とする判例(福岡地小倉支判昭四〇・六・九下刑集七・六・一二六一)とがある。2の判例は,一般に道 路交通法違反の行為は,同一場所,態様でも,日常反覆して起こりうるから,その所為の日時は,不可 分的に犯罪の重要な要素をなすということを理由とした。道路交通法違反の場合は,日時の変更が訴因 の内容に実質的な影響を与えるという判断であろう。

 訴因の訂正については,刑事訴訟規則四四条一項二七号に「起訴状の訂正」という規定があり,これ は訴因の訂正を含むと解されるが,これ以外には,訴因の訂正の手続を定めた規定などは存在しない。 従って,この場合にも,適当な方法で行なえば足りる,ということになろう。下級審の判例であるが, 訴因の訂正については裁判所の許可を要しないとしたものがある(名古屋高判昭二七・五・一九高判特三 〇・九)。

 

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