司法試験の勉強会

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租税法律主義とは?司法試験解説

一 はじめに

憲法の第七章「財政」は,その条文の技術的色彩から敬遠されがちであるが,国の財政を国民の代表 からなる国会のコントロールのもとに置いているという趣旨,目的を理解し,この目的に立ちかえって 十分検討しておいていただきたい。本問は,そのなかでも国民の権利に直接影響を及ぼす租税賦課に関 する国会のコントロールを論ずるものである。


二 租税法律主義の内容

租税法律主義は「新たに租税を課したり,現行の租税を変更したりするには,法律または法律の定め る条件によらなければならない」(八四条)という原則を言う。
1 趣旨 「租税」とは,国(地方公共団体)が,その経費を支弁するため国民から強制的に無償で徴収する金銭をいう。
租税が国民から強制的に財産権を奪うものである以上,国の唯一の立法機関である国会(四一条) の承認を得なければならないことは当然であり,あらためてこの旨の憲法の明文を要するものではない。
しかし,日本国憲法は三〇条で,国民の納税義務の面から租税が法律で定められるべきことを規定すると同時に,八四条で今度は課税権の面から規定することにより,「代表なくして課税なし」という近代憲法の基礎理念の重要性を宣明しているものと考えられる。
そして,明治憲法にも,租税法律主義を定める条文があったが,そこでは「新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ」(六二条一項)としつつも,同条二項で「但シ報償ニ属スル行政上ノ 手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラズ」として,例外が認められていたのに比して,日本国憲法 の租税法律主義にはこのような例外を認めず,全面的に適用される原則となっていることも大きな意味をもつ。
2 法律で定めるべき内容-課税要件法定主義 租税について法律で定めるとは租税の種類ないし課税の根拠のような基本的事項だけでなく,納税義務者,課税物件,課税標準,税率のような実体的要件や賦課,納付,徴税の手続も法律によって定められることを要する(課税要件法定主義,最大判昭和 30・3・23 民集九・三・三三六,同昭和 60・327 民集三九・二・二四七)。
したがって,これらの定めを白紙的,包括的に委任することは許されない。そして,当然のことながら,法律上に課税要件を規定するにあたっては課税要件が明確でなければならない。不明確な規定は結局のところ,白紙的,包括的委任と同じことになるからである。
3 「法律に定める条件」 八四条が「法律」のほかに「法律で定める条件」によることを規定している。
この趣旨は,租税につ いて細目に至るまで法律で定めることは実際的でないし,これを要求することも適切ではないので,ある範囲で法律以外の法形式に委任することを許したところにあると考えられる。
そのように解されるとしても問題は委任の許される範囲である。租税法律主義を定めた本質が忘れられてはならない。
したがって,許されるとしても非常に限られた範囲(たとえば徴収手続の細目について)に限って,しかも個 別具体的なものでなければならないと解すべきである。
たとえば,政令に課税の重要な点を定めることを委任することは許されない。通達により実質的に課税がなされるのも認められない。
それまで非課税物品とされてきたパチンコ球遊器が,通達により課税物件である「遊戯具」に該当するとされ,物品税が賦課されたため,その課税処分を争った事件はこの観点から十分検討しておく必要がある。
一般に通達は,公平に課税するために,租税に関する法律の解釈を統一する目的でだされるものであり,本件も パチンコ球遊器が「遊戯具」に当たるかという物品税法の解釈の名の下になされたものであるが,一片の通達によりそれまで非課税物品であったものを課税物品とすることが許されるのか疑問がないわけではない。
たとえ,パチンコ球遊器が物品税法の遊戯具にあたるという解釈が正しく,したがってこれま で本来課税すべきものにしてこなかったのであるとしても,長期間にわたり非課税とされてきたのであれば,立法上の手当てが必要だったという批判がある。 この点について最高裁判所は「通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上,本件課税処 分は法の根拠に基づく処分」であるとしている(最判昭和 33・3・28 民集一二・四・六二四)。


三 租税法律主義の例外


一般に租税法律主義の例外として認められているものとして論じられているのは以下の三点である。
それぞれ,どうして例外として認められるのか理解しておくことが必要である。
1 地方税 地方税法は,税目,課税物件,税率など重要な点を条例に委ねている(三条)。これは形式的には法律以外の法形式への委任には違いないが,地方自治の本旨(憲法九二条)から地方税地方公共団体によって決めるのが相当であると考えられ,住民の代表である地方議会の議決によって作られる条例によるのであるから,租税法律主義の要請を満たしている。この意味で,実質的には例外というのは当たらないであろう。
2 関税―その一 関税定率法は報復関税,相殺関税,不当廉売関税などのように関税率を一定の物品について定めることを政令に委任しているが(五条ないし二〇条の二),これは関税制度が国民経済の動向に影響するところが大きく,また対外関係に影響を及ぼす場合が少なくないという特殊性から認められた例外である。
3 関税―その二 関税法は関税率について条約による規定があるときは,法律の定めに関わらず,条約によることとし ている(三条但書)。これは前記の関税の特殊性から認められているが,条約締結には国会の承認が必要 であり(憲法六一条),しかも条約は法律よりも形式的効力においてまさると解されていることを考えれ ば,これも厳密には例外とは言えないのであろう。

 

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